校長挨拶

国立沼津工業高等専門学校校長 柳下福蔵(M1)

 昨年5月12日付けで、計らずも沼津高専の第10代学校長を拝命しました。平成24年度の創立50周年に向けて鋭意努力してまいりますのでご支援・ご協力の程よろしくお願いいたします。
 平成16年4月1日から55校の国立高専が独立行政法人国立高等専門学校機構(以後、高専機構と略す)の所属となり早5年が経過しようとしております。すなわち、高専機構、沼津高専は中期5カ年計画を締めくくる年を迎えています。高専機構は当初の計画を押しなべて達成でき、大学評価学位授与機構から良好の評価をいただいています。
沼津高専の5年間を振り返りますと、平成16年3月3日に地域共同テクノセンターが設置され、同センターを核として地域企業との共同研究、受託研究、技術相談が年々増加し活発に行われるようになり、平成18年度から始まった「高等専門学校等を活用した中小企業の人材育成事業」、以前から実施している学生のインターンシップに加えて平成20年度からは企業技術者に本校学生の教育を担当していただく「共同教育」が開始され地域との連携・協力関係がますます盛んになってきております。また、学校経営にとって最も大切な入学志願者数が平成20年度に1.95倍まで復活できたことにより、中期5カ年計画は大方満足できる結果にまとまります。
また、平成16年度のJABEE(日本技術者認定機構)による国際的に通用する技術者教育としての認定、平成17年度の大学評価・学位授与機構による機関別認証評価に加えて、平成17年度「実験・実習・演習等実技科目」、平成18年度「コミュニケーション・プレゼンテーション能力育成」、平成19年度「工学基礎教育」に関する本校独自の外部評価により、外部の教育・行政・産業界の委員の方より貴重な意見を頂戴し、本校教育の改善を図ってきております。
 昨秋来、米国に端を発した100年に一度とも言われている世界大不況の影響により日本の製造業界は極めて厳しい状況にありますが、こういう時だからこそ未来に向けての技術開発が必要であり、日本経済新聞の元旦のトップ記事「危機がひらく未来へ、トヨタ太陽電池車で挑む」は正にそのことを象徴していると思います。同誌の他面には、ノーベル化学賞・島津製作所フェロー・田中耕一氏が、「日本のものづくりシステムの長所とは何か?企業で働く研究者、技術者の強みは何か?」の問いに「チームワークに優れる日本のものづくりは、異分野融合を行いやすく独創性をも育てる。企業の研究者は、しがらみが少ない」と語っている。かつて、日本の社会は個性を尊重せず、個人プレーを嫌うからノーベル賞の受賞者が少ないと言われた時期があったが、異分野融合が決め手となる技術開発・ものづくりの世界に、このことは当てはまらないようである。
 昨年度は、高専教育について国としての議論が本格的に行われた年度であり、中央教育審議会において、「高等専門学校教育の充実について」というテーマで審議が精力的に行われ、昨年暮、中央教育審議会答申の一部として文部科学省のホームページに公開されました。結論として、これまでの高専教育に高い評価を与えるとともに、社会経済環境の変化に対応した今後の高専教育の充実の方向性を示しています。その基本的な考えはつぎのとおりです。
● 中堅技術者の養成から、幅広い分野で活躍する多様な実践的・創造的技術者の養成へ
● 多様な高等教育機関のうちの一つとして本科・専攻科の位置付けを明確に
● 産業界や地域社会との連携を強化し、ものづくり技術力の継承・発展を担いイノベーション創出に貢献する人材の輩出へ
このことは、本校が教育理念として掲げている「人柄のよい優秀な技術者となって世の期待にこたえよ」と基本的に相通ずるものであり、先に述べた独立行政法人化後の沼津高専の5年間の活動は中央教育審議会答申が示している「高等専門学校教育の充実」を正に実践しているものであります。
 最後になりますが、平成24年度に行う創立50周年記念事業について、今後、学校関係者が同窓会役員、教育後援会役員を交えて徐々に議論を重ね、具体的な実施内容をつめて行きます。どの同窓会も、母校が創立50周年の頃に会員数が最大になり(高齢者が順次お亡くなりになることにより)以後はその数を維持しているのが現状のようであります。
このことを考えますと、記念誌の発行、記念式典の挙行以外に、母校に何か記念になる物を残す・・・・というのはいかがでしょうか?
 同窓会会員皆様の変わらぬご支援・ご協力をお願いして筆を擱くことにいたします。

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